独特な切り口より発せられる極端な意見で、ときには炎上も引き起こしながら、「頭のおかしい天才学者」という異名で注目を浴びるイェール大学助教授の成田悠輔(なりたゆうすけ)さん。過激な意見とは裏腹に、学者として優れた研究結果を挙げていることは他ならぬ事実です。今回は、日本と異なるアメリカの大学院の特徴を成田悠輔さんの紹介を交えてご紹介します!
イェール大学助教授・成田悠輔とは?どんな学歴?
イギリスの教育関連情報誌(Times Higher Education)が発表する1600以上の大学を対象に教育・学習環境や論文の引用数など、5つの評価基準より割り出された最新の世界大学ランキングによると、9位に位置するイェール大学(日本最高位の東京大学は35位)。そんな世界トップの大学で助教授を務める成田悠輔さんはどのような学歴の持ち主なのでしょうか。
名門中高一貫校「御三家」へ進学
成田悠輔さんは、1986年生まれの東京都北区の出身。中学受験を経て、東京大学への進学者数の多さから古くより「御三家」として知られる中高一貫校ひとつ麻布中学校・高等学校に進学します。
順風満帆に思えた学生生活でしたが、極度の睡眠障害を患い、中学・高校ともに不登校という生活を余儀なくされ、インターネットに没頭する日々を過ごします。しかし、先生方の応急措置によって何とか進級、卒業できたそうです。
引きこもりから日本一の大学、世界一の大学院へ進学
「東京大学主席」という輝かしい肩書で語られることの多い成田悠輔さんですが、実は高校3年時の大学受験を断念しています。病気のこともあり、受験対策を全くしてこなかった成田悠輔さんは、大学受験を早々にして諦めてしまいました。しかし、その姿を見るに見かねた母親に説教されたことを機に一念発起。東京大学の経済学部へ進学します。
卒業時には「主席賞」とも呼ばれる、非常に優秀な論文にのみ送られる「大内兵衛賞」を卒業論文で受賞しています。
大学卒業後は、2011年に東京大学大学院経済学研究科修士課程を修了。2016年にはマサチューセッツ工科大学(通称:MIT)にて、博士課程を修了(Ph.D.を取得)しています。学問分野における成功者として、この上ないほどに輝かしい実績だと言えるでしょう。
日米比較!アメリカの大学院の特徴や違いは?
本当にこの上ないほど輝かしい経歴であることに間違いないのですが、これは成田悠輔さんが学問と真摯に向き合ってきた結果にすぎません。では、なぜ成田さんが「アメリカで博士号を習得する」という選択に至ったのか気になりませんか?以下では、日本とアメリカの大学院の特徴を比較し、その選択の意義について考えてみようと思います。
大学進学に対するイメージの違い
まず大前提として、日本とアメリカでは「大学教育の捉え方」が根本的に異なります。日本人のみなさんは「大学=就職」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
数百・数千人から数十人の人材を選定する就職において、やむを得ない選定基準のようにも思えますが、「学術研究および教育における高等教育機関」という本来の存在意義からは大きく逸れてしまっています。
一方、日本人のみなさんでも「大学院=研究機関」というイメージは多くの方が持っているかと思います。日本では「専門的に勉強したい人だけが“大学院へ”進学する」と思われがちですが、そもそもアメリカでは「専門的に勉強したい人だけが“大学へ”の進学を決める」という、価値観に根本的な違いがあります。
つまり、大学進学はアメリカ人にとって“就職”のための選択ではなく、“学問探求”のための選択であるという意識が強く、実際に大学と大学院への進学をセットで見据えている学生が多くを占めます。
とにかく厳しい卒業条件!
価値観の差異を裏付ける、日本では考えられないアメリカの大学院の特徴が「卒業条件」に表れています。アメリカのほとんどの大学院では、修士博士問わず、GPAが3.0を下回ると退学となります。
GPAとは自身の成績における平均値のことです。GPAは4.0~0.0の5段階評価となっており、中央値が2.0であることから3.0というラインがいかに厳しいものなのか想像がつくのではないでしょうか。簡単に言ってしまえば、平均的な成績では確実に退学になるということです!
博士課程入学に修士課程修了が必要ない!?
日本の大学院では、博士課程に入学する条件として修士課程の修了を必要とします。一方、アメリカの大学院では、修士と博士を合わせたようなカリキュラムになっていることが多いため、入学の際に修士号を必要としない場合が一般的となっています。
また、日本では修士2年博士3年と目安となる期間が決められているのに対し、アメリカでは具体的な期間が一切決められていません。つまり、自身の研究や博士論文への熱量がそのまま反映される仕組みとなっており、それもまたアメリカらしい特徴のひとつではないでしょうか。
最後に
日本と比較してアメリカの大学院は、形式的な枠組みに囚われず自由度が高い反面、卒業や学位の習得が難しいという特徴が見えてきましたね。これを踏まえると、学問に対する真摯な姿勢がうかがえる成田悠輔さんにとって、研究や論文作成を自身のペースで進めることのできる自由度の高さという点が海外留学の決め手となったように思えます。また、これらが単に大学院の特徴の差なのではなく、国民性などを構築する文化的差異としても表れていることは、文化学の非常に興味深い部分のように感じました。